前田特許事務所

トップ > ★商標の基礎知識 > 商標権の効力

商標権の効力

 
商標権は特定の商品または役務(サービス)を指定して登録されます。従って、商標と商品・役務とをセットで商標権の効力を考える必要があります。 商標権の効力は、特許庁長官が商標権を設定登録したときから発生します。 


1.専用権と禁止権

商標権の効力は、専用権と禁止権に分けられ、その範囲は異なっています。 

◎専用権
「商標権者は、指定商品について登録商標を使用する権利を専有する(商標法第25条)。」
専用権は登録商標を指定商品に独占的に使用する権利です。さらに、使用行為だけでなく商標権を収益・処分するという商標権に対する支配的効力を含む積極的効力です。なお、登録商標と「同一商品・類似商標」、「類似商品・同一商標」、「類似商品・類似商標」に使用する権利はありません。 

◎禁止権
禁止権は、専用権の効力範囲(同一商品・同一商標)に加えて、正当な権限なしで登録商標と「同一商品・類似商標」、「類似商品・同一商標」、「類似商品・類似商標」に使用することを禁止できる効力のことです。 



2.商標の類似 

「商標の類似」とは、「商品/役務(サービス)について、出所の混同を生じる程度に似ている現象」と理解することができます。
商標は、識別標識なので2つの異なる商標が付された商品/役務(サービス)の間で出所の混同が生じれば、その2つの商標は類似していることになります。 

 
商 品 同 一
商 品 類 似
商 標 同 一
同一
<専 用 権>
類似
<禁 止 権>
商 標 類 似
類似
<禁 止 権>
類似
<禁 止 権>


商標の類似は、「(1)外観」・「(2)称呼」・「(3)観念」をもって判断されます。

(1)外観類似
  外観そのものが互いに似ていること、視覚面での類似 
  例: 商標「DoCoMo」と商標「doremo」 

   
(2)称呼類似
  商標の発音が互いに似ていること、聴覚面での類似
  例:商標「アトミン」と商標「アタミン」

(3)観念類似
  商標から想起される観念が互いに似ていること、意味面での類似
  例: 商標「王様」と商標「KING」


類似判断の基本となる原則は、需要者の誤認、混同可能性があるか否かということです。それに加味される重要要素としては、取引の経験則、対比観察と隔離観察、全体観察と要部観察、分離観察、社会構造の変化、市場構造の変化、経済情勢の変化等があります。

つまり、商標の類似を判断するには、
極めて高度な知識と鋭い判断及び経験を要するので専門弁理士のサーチが必要となります!

そして、商標の類似判断は、必ず「商品/役務」とセットで考えなければなりません。 商品/役務が同一または類似である場合に限って、商標の同一または類似が意味をもってきます。 



3.商品/役務の類似

「商品あるいは役務の類似」とは、[ある商標が付された商品/役務(サービス)同士を比較したとき、商品/役務について、出所の混同を生じる程度に似ている現象]と理解することができます。

●全ての商品/役務は、国際分類によって45の「区分」(1類-45類)に分けられています。また、特許庁が審査のために、互いに類似であるとみなした商品・役務をそれぞれ分類してまとめていますが、この分類は、「区分」とは違います。 

●「区分」は膨大な数の商品/役務を、大まかな区分け(分類)して整理するためのものであって、商品/役務の類否とは直接には関係ありません。 具体的には、特許得庁は、類似関係にある商品/役務同士が極力同じ区分になるようにはしていますが、同じ区分に属する商品/役務だからといって類似関係にあるとは言えないのです。

●逆に、別の区分に属する商品/役務だからといって非類似であるとも言えません。 

従いまして、区分(分類)のみに基づいて商品/役務の類似、非類似を判断することは非常に危険です。
商品と役務(サービス)との間の類否判断:原則的には非類似、しかし、鉄板と鉄工所、キッチン用品とキッチン用品販売代行業のように関連関係を持つ場合には類似となります。



4.商標権の効力が及ばない範囲

商標法第26条には、その商品の普通名称など、商標権の効力が及ばない範囲が規定されています。これに該当する場合には、登録商標と同一または類似の商標を使用しても、差止等の商標権の行使ができない場合があります。普通名称などは特定人に使用を独占させることが好ましくないと考えられるからです。
つまり、通常、商標権者は、指定商品について登録商標を使用する権利を独占し(専用権)、その排他的効力は商標権の類似範囲まで拡張され、ひいては侵害の予備行為も侵害としてみなされる場合があります(禁止権)が、一端登録設定された商標でも商標法26条のような場合には、誰もが自由に使用できるようにする必要性が高いので公益的理由から商標権の効力が及ばないように規定しています。例えば、自己の氏名や肖像、商品・役務の普通名称、慣用商標、商品・役務の品質等を普通に示す表示のみからなるもの等です。

例:商標 マツモトキヨシ(商品 置き薬)に対して 町の中の「マツモトキヨシ薬店」(自己の氏名を店名にしている場合)



5.時間的効力

商標権の存続期間は10年間ですが(商標法第19条第1項)、商標権は更新登録ができるため、更新登録を繰り返すことにより商標権は半永久的に保護されます(同条 第2項)。これは、他の知的財産権と異なり、商標権者が登録商標を継続して使用する限り、商標権の価値(商品のブランド価値)は時が経っても陳腐化することがないと考えられるからです。逆に登録商標を使用すればするほど、商標権の価値は高まっていきます。
また、10年毎に更新登録を必要としたのは、使用されなくなった商標についてまで登録を継続する必要はないからです。